医療×労務コラム

2026.09.05

診療報酬・介護報酬改定のたびに混乱しない“人事・賃金設計”の考え方

診療報酬・介護報酬改定のたびに混乱しない“人事・賃金設計”の考え方

診療報酬・介護報酬の改定が行われるたびに、「新しい加算を取得するためにはどのような体制が必要なのか」「人員を増やすべきか」「賃金体系を見直す必要はあるのか」と頭を悩ませる医療機関や介護事業所は少なくありません。
実際に、
・「加算要件を満たすため、新たな担当者を配置しなければならない」
・「常勤換算で必要な人数は分かったが、人件費とのバランスが取れるか不安」
・「加算を取得したいが、採用や賃金をどう設計すればよいか分からない」
・「報酬改定のたびに人員配置を見直しており、現場が混乱してしまう」
といったご相談をいただく機会も多くあります。
診療報酬・介護報酬の改定は、医療機関や介護事業所の収益構造に大きな影響を与える重要な制度です。一方で、その都度場当たり的な対応を繰り返していると、人件費だけが膨らんだり、現場の負担が増えたりして、かえって経営を不安定にしてしまうことがあります。

重要なのは、「今回の改定にどう対応するか」だけではなく、「将来の改定にも対応できる組織をどうつくるか」という視点を持つことです。
今回は、報酬改定のたびに慌てないための人事・賃金設計の考え方について解説します。

「加算ありき」で人員を増やすことのリスク

新たな加算を取得するために職員を採用したものの、期待していたほど算定件数が伸びず、人件費だけが増えてしまったというケースは決して珍しくありません。
また、加算を取得すると、その後の運用にも多くの業務が発生します。
例えば、
・記録の作成
・定期的なカンファレンスや会議
・研修の実施
・書類の整備
・実績管理や届出
など、診療や介護以外の業務も増えることになります。
その結果、本来の医療・介護サービスに充てる時間が減り、現場の負担が大きくなることもあります。
さらに、診療報酬・介護報酬は数年ごとに見直しが行われます。

現在は評価されている加算でも、次回改定では要件が厳格化されたり、廃止・縮小されたりする可能性があります。
もし特定の加算を前提として人員体制や賃金制度を構築していると、制度変更によって経営そのものが大きく影響を受けることになりかねません。
加算は経営を支える重要な制度ですが、「取得すること」自体が目的になってしまうと、中長期的には経営リスクにつながることもあるため注意が必要です。

人事・賃金設計は「経営方針」から考える

人事制度や賃金制度を考える際に最も重要なのは、「どのような医療・介護サービスを提供する組織を目指すのか」という経営方針を明確にすることです。
例えば、
・在宅医療を強化したい
・訪問看護を拡大したい
・小児診療を充実させたい
・リハビリ体制を強化したい
・認知症ケアに力を入れたい
など、経営の方向性によって必要となる人材や求められる役割は大きく異なります。
経営方針が明確になれば、その実現に必要な人材像や職種、育成方針も見えてきます。

そのうえで、
・中長期的に取得・維持したい加算
・収益向上につながる加算
・現場への負担とのバランスが取れる加算
を整理し、優先順位を決めることが重要です。
「取りやすい加算」ではなく、「経営戦略に合った加算」を選択することが、持続可能な組織づくりにつながります。

人員計画は「今」ではなく「数年先」を見据える

採用は、思い立ったときにすぐ実現できるものではありません。
医療職や介護職は採用競争が激しく、人材育成にも一定の期間が必要です。
そのため、人員計画は次回の報酬改定も見据えながら、中長期的に考えることが重要です。
例えば、
・どの職種が不足しやすいのか
・今後退職が見込まれる職員はいるか
・資格取得予定者をどのように育成するか
・管理職候補をどう育てるか
といった点も含めて計画を立てることで、制度変更にも柔軟に対応しやすくなります。
また、一人しか担当できない業務を減らし、複数の職員が対応できる体制を整えることも重要です。
業務の属人化を防ぐことは、報酬改定への対応だけでなく、退職や休職への備えにもつながります。

賃金制度も「役割」に応じた設計へ

賃金制度についても、勤続年数だけで処遇を決める仕組みでは、報酬改定への対応が難しくなることがあります。
例えば、
・主任として後輩育成を担当する
・感染対策を担当する
・在宅医療を推進する
・加算管理や書類整備を担当する
など、組織に必要な役割を担う職員を適切に評価できる制度が求められます。
職務給や役割給などを取り入れることで、組織の方向性と人材育成を一致させやすくなり、「何を期待されているのか」が職員にも分かりやすくなります。
また、公平性や納得感のある評価制度は、モチベーション向上や人材定着にもつながります。

報酬改定を見据えた人事戦略が重要

診療報酬・介護報酬の改定は数年ごとに行われます。
そのたびに採用や賃金制度を大きく変更していては、現場にも経営にも大きな負担がかかります。
重要なのは、改定内容に柔軟に対応しながらも、自院・自事業所の経営戦略に沿った人員体制を維持できる仕組みを整えることです。
そのためには、経営者だけで判断するのではなく、経営・人事・労務・財務の視点を組み合わせながら、中長期的な人材戦略を進めることが欠かせません。
報酬改定を「その場しのぎ」で乗り切るのではなく、組織を見直す機会として活用することが、持続的な成長につながります。

社会保険労務士法人サムライズがサポートできること

報酬改定への対応は、加算要件を確認するだけでは十分ではありません。
人件費の増減が経営に与える影響を分析し、持続可能な人員体制や賃金制度を設計することが重要です。

私たち社会保険労務士法人サムライズでは、診療報酬・介護報酬改定を踏まえた人件費シミュレーションをはじめ、加算要件に対応した職種・配置・勤務形態の設計、採用計画や人材育成の見直し、さらに職務給や役割給を取り入れた賃金制度の構築まで、医療機関・介護事業所の実情に合わせたサポートを行っています。

また、就業規則や評価制度との整合性を図りながら、人事制度全体を見直すことで、制度改定があっても柔軟に対応できる組織づくりをご支援しています。報酬改定のたびに場当たり的な対応を繰り返すのではなく、「自院・自事業所の経営戦略」と「人事・労務」を一体的に考えることが、安定した組織運営と持続的な成長につながります。

制度改定を経営改善の機会として活かしたいとお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。人材と組織の両面から、将来を見据えた人事・賃金設計をサポートいたします。

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