
少子高齢化の進行に伴い、医療・介護分野では慢性的な人材不足が続いています。特に看護補助者や介護職員、医療事務などの人材確保は年々難しくなっており、採用活動に苦労している医療機関も少なくありません。
こうした状況の中で、外国人スタッフの採用を検討するクリニックや訪問看護事業所、介護施設などが増えています。以前は介護施設での受け入れが中心でしたが、現在では医療機関でも外国人材が活躍する場面が広がっており、人材確保の有力な選択肢の一つとなっています。
一方で、「外国人だから採用できる」「人手不足だからすぐ働いてもらえばよい」と考えるのは危険です。
外国人が日本で働くためには、それぞれの活動内容に応じた在留資格が必要であり、在留資格によって従事できる業務や就労時間には制限があります。
これらを十分に確認しないまま雇用すると、医療機関側も法令違反に問われる可能性があります。
安心して外国人スタッフを受け入れるためには、採用前の確認と適切な労務管理の両方が欠かせません。
在留資格によって従事できる仕事が異なる
外国人が日本で働くためには、出入国在留管理制度に基づく在留資格が必要です。
在留資格は、それぞれ認められた活動内容が異なるため、「日本に住んでいる外国人だから、どの仕事でもできる」というわけではありません。
例えば、「介護」の在留資格は、日本の介護福祉士資格を取得した外国人が介護業務に従事するための資格です。
また、「特定技能(介護)」は、一定水準の日本語能力と技能試験に合格した外国人が介護分野で就労するための在留資格となっています。
一方、看護師や保健師などの専門職については、日本の国家資格を取得した上で、業務内容に応じた適切な在留資格が必要になります。
さらに、「留学」や「家族滞在」の在留資格では、原則としてフルタイム勤務は認められていません。
資格外活動許可を受けている場合でも、就労時間には上限が設けられており、その範囲を超えて働かせることはできません。
在留資格は更新期限もあるため、採用時だけでなく、在職中も有効期限を確認することが重要です。
採用時は在留カードの確認を徹底する
外国人スタッフを採用する際には、在留カードの内容を必ず確認することが必要です。
確認したい主な項目は、
・在留資格
・在留期間(有効期限)
・就労制限の有無
・資格外活動許可の有無
などです。
在留カードの内容を十分に確認しないまま勤務させると、不法就労に該当する可能性があります。
また、不法就労であることを知らなかった場合でも、確認を怠っていたと判断されれば、事業主が「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。
採用時には履歴書だけで判断せず、在留カードの原本を確認し、必要に応じて内容を記録しておくことが望ましいでしょう。
採用担当者だけに任せるのではなく、確認手順を院内で標準化しておくことも重要です。
外国人スタッフも日本人と同じ労務管理が基本
外国人スタッフであっても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、社会保険・労働保険などの労働関係法令は、日本人スタッフと同様に適用されます。
そのため、
・外国人だから賃金を低く設定する
・社会保険へ加入させない
・有給休暇を付与しない
・残業代を支払わない
といった取扱いは認められません。
国籍ではなく、職務内容や雇用形態に応じた公平な処遇を行うことが基本です。
また、雇用契約書や労働条件通知書についても、労働条件を十分理解できるよう、必要に応じてやさしい日本語や母国語による説明資料を活用することが望まれます。
日本の職場文化への配慮も重要
外国人スタッフの中には、日本の医療現場や職場文化に初めて触れる方も少なくありません。
例えば、
・報告・連絡・相談(報連相)の考え方
・時間厳守の意識
・患者さんへの接遇
・感染対策や医療安全
・個人情報保護
など、日本では当たり前とされているルールでも、十分に伝えなければ理解が難しい場合があります。
そのため、就業規則や勤務ルール、安全衛生に関する説明は、できるだけ分かりやすい言葉で伝えることが重要です。
写真やイラストを活用したマニュアル、多言語資料、通訳サービスなどを取り入れることも有効でしょう。
また、OJTを通じて一つひとつ丁寧に指導する体制を整えることで、安心して働ける環境づくりにつながります。
多様性を尊重した職場づくりも欠かせない
外国人スタッフが長く活躍するためには、制度だけでなく職場風土も重要です。
国籍や文化、宗教、生活習慣の違いを理由とした差別的な言動やハラスメントがあると、早期離職につながる可能性があります。
そのため、
・異文化への理解を深める研修
・相談しやすい環境づくり
・困りごとを相談できる担当者の配置
・定期的な面談
などを通じて、多様な人材が安心して働ける職場づくりを進めることが大切です。
外国人スタッフだけではなく、日本人スタッフも含めて、お互いの違いを理解し、尊重し合える職場環境を整えることが、定着率向上にもつながります。
受け入れ体制づくりは採用前から始まる
外国人スタッフの受け入れは、採用が決まってから始まるものではありません。
採用前から、
・在留資格を確認する手順の整備
・受け入れマニュアルの作成
・院内ルールの整理
・教育担当者の選任
・生活相談の体制づくり
などを準備しておくことで、入職後のミスマッチを防ぐことができます。
また、外国人スタッフは仕事だけでなく、日本での生活そのものに不安を抱えていることもあります。
仕事や生活上の困りごとを相談できる担当者を決めておくことで、安心して長く働ける環境づくりにつながります。
まとめ
外国人スタッフの雇用は、医療機関の人材不足を補う有効な選択肢の一つです。しかし、在留資格によって従事できる業務や就労条件が異なるため、採用時には在留カードや就労制限の内容を十分に確認することが欠かせません。
また、雇用後は日本人スタッフと同様に適切な労務管理を行うとともに、日本の職場文化や医療現場のルールを丁寧に伝え、安心して働ける受け入れ体制を整えることが重要です。
私たち社会保険労務士法人サムライズでは、外国人スタッフの採用時における在留資格の確認方法に関するアドバイスをはじめ、就業規則や雇用契約書の整備、賃金制度の見直し、社会保険・労働保険の適用、外国人材を含めた労務管理体制の構築まで、医療機関の実情に合わせたサポートを行っています。
「外国人スタッフの採用を検討している」「現在の受け入れ体制を見直したい」「労務管理に不安がある」といった場合は、お気軽にご相談ください。適切な制度と受け入れ体制を整えることが、外国人スタッフにとっても医療機関にとっても、安心して働ける職場づくりにつながります。
