医療×労務コラム

2026.08.23

育休・産休で人手不足に…医療機関の“両立支援”の工夫とは

育休・産休で人手不足に…医療機関の“両立支援”の工夫とは

医療機関では慢性的な人材不足が続く中、職員の産休・育休への対応に悩む院長や事務長も少なくありません。
「一人抜けるだけで現場の負担が大きくなる」「復職後は短時間勤務となり、シフト調整が難しい」「急な子どもの体調不良による欠勤への対応に苦慮している」といったご相談は、クリニックや歯科医院からも数多く寄せられます。
しかし、産前産後休業や育児休業は法律で保障された制度であり、事業主は制度を適切に運用することが求められます。
一方で、制度への対応を「法律だから仕方がない」と考えるのではなく、職員が安心して働き続けられる環境づくりの一環として捉えることが重要です。
両立支援が充実している医療機関は、職員の定着率が高まり、採用活動でも「働きやすい職場」として評価されやすくなります。
今回は、医療機関における産休・育休制度の基本と、無理なく両立支援を進めるための工夫について解説します。

医療職はライフイベントの影響を受けやすい

看護師や准看護師、医療事務、歯科衛生士、リハビリスタッフ、臨床検査技師など、医療機関では女性職員の割合が高い職種が多くあります。
そのため、結婚・妊娠・出産・育児といったライフイベントを迎える職員も少なくありません。
例えば、
・産休・育休取得後に復職せず退職してしまう
・復職後は短時間勤務や勤務日数の調整を希望する
・保育園の送迎時間に合わせた勤務を希望する
・子どもの体調不良による急な欠勤や早退が発生する
・学校行事などで休暇取得が必要になる
こうした状況が重なることで、他の職員の業務負担が増え、現場の運営に影響が出ることがあります。
しかし、これらは特定の職員だけの問題ではなく、多くの職場で起こり得ることです。
「個人の事情」として考えるのではなく、組織全体で支える仕組みを整えることが、長期的には医療機関の安定した運営につながります。

産休・育休は法律で保障された制度

産前産後休業や育児休業は、育児・介護休業法や労働基準法などに基づいて定められた制度です。
主な内容としては、次のようなものがあります。
・産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から取得可能
・産後休業は出産翌日から8週間で、この期間は原則として就業させることができない
・育児休業は原則として子どもが1歳になるまで取得でき、一定の条件を満たす場合は最長2歳まで延長できる
・3歳未満の子を養育する職員については、短時間勤務制度を設けることが事業主に義務付けられている
・子の看護等休暇や所定外労働の制限など、仕事と育児を両立するための制度も整備されている
近年は法改正により、育児休業制度や育児期の柔軟な働き方に関する制度も拡充されています。
そのため、制度内容を定期的に確認し、就業規則や運用方法を見直すことも重要です。

両立支援がうまくいく医療機関の工夫

制度を整備するだけでは、職員が安心して働き続けられる環境は実現しません。
実際に両立支援がうまく機能している医療機関では、復職を見据えた準備を早い段階から進めています。
例えば、産休・育休取得前に面談を行い、
・復職時期の希望
・短時間勤務の利用予定
・担当業務の希望
・子育てとの両立に関する不安
などを共有しておくことで、復職後のミスマッチを防ぎやすくなります。
また、復職時にも改めて面談を実施し、勤務時間や勤務日数、担当業務について話し合うことで、本人に無理のない働き方を検討できます。
例えば、
・受付業務を中心に担当する
・患者対応の少ない時間帯を担当する
・書類作成や事務業務を組み合わせる
・急な残業が発生しにくい配置にする
など、業務内容を工夫することで、育児との両立がしやすくなります。
重要なのは、「これまでと全く同じ働き方」を求めるのではなく、その時々の状況に応じた柔軟な対応を検討することです。

人員配置は「復職すること」を前提に考える

産休・育休中は代替要員の確保が課題となります。
しかし、「退職するかもしれない」と考えて採用や配置を行うのではなく、「復職すること」を前提に人員計画を立てることが大切です。
例えば、
・育休取得予定を踏まえた早めの採用活動
・パート職員や有期雇用職員の活用
・複数の職員が同じ業務を担当できる体制づくり
・業務マニュアルの整備
などを進めておくことで、一人の職員に業務が集中することを防ぐことができます。
また、日頃から業務の属人化を防ぎ、複数人で対応できる体制を整えておくことは、産休・育休だけでなく、急な退職や病気による休職への備えにもなります。

制度の「見える化」が離職防止につながる

制度が整っていても、職員が内容を知らなければ十分に活用されません。
「妊娠したら働き続けにくいのではないか」「育児との両立は難しいのではないか」と不安を感じ、退職を選択してしまうケースもあります。
そのため、
・就業規則への明記
・職員向けハンドブックの作成
・院内掲示やイントラネットでの周知
・相談窓口の案内
・制度利用者の復職事例の紹介
などを通じて、制度を「見える化」することが重要です。
さらに、管理職やリーダー職が制度について理解し、相談を受けた際に適切な説明ができる体制を整えることも欠かせません。
制度を利用しやすい職場風土があることで、職員は安心して将来設計を考えられるようになります。

両立支援は人材定着と採用力の向上にもつながる

産休・育休への対応は、法律を守るためだけのものではありません。
安心して働き続けられる環境を整えることは、職員の定着率向上だけでなく、採用活動においても大きな強みになります。
近年では、求職者が給与や休日数だけでなく、「育児と仕事を両立しやすい職場か」「ライフイベントに理解がある職場か」といった点を重視する傾向も高まっています。
両立支援制度が充実し、実際に利用されている職場は、働きやすい医療機関として選ばれやすくなります。

まとめ

医療機関では女性職員の割合が高く、産休・育休への対応は避けて通れない課題です。しかし、制度を適切に整備し、復職までを見据えた支援体制を構築することで、職員が安心して働き続けられる環境を実現できます。
また、制度を利用しやすい職場風土や柔軟な人員配置を進めることは、人材の定着率向上だけでなく、採用力の強化や安定した医療提供にもつながります。
私たち社会保険労務士法人サムライズでは、産休・育休制度に対応した就業規則の整備をはじめ、育児・介護休業法への対応、短時間勤務制度の運用、人員配置の見直し、復職支援の仕組みづくりなど、医療機関の実情に合わせた労務管理をサポートしています。
「育休取得者への対応方法に悩んでいる」「復職後の勤務体制を見直したい」「制度を整備して働きやすい職場をつくりたい」とお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。職員一人ひとりが安心してライフイベントを迎え、長く活躍できる職場づくりが、これからの医療機関経営においてますます重要になっています。

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