
「採用しても応募が集まらない」「ようやく採用できても長く続かない」――このような悩みを抱えるクリニックは少なくありません。
人材不足が深刻化する中、既存スタッフが残業や業務負担を抱え、その負担がさらに離職を招くという悪循環に陥る医療機関も多く見られます。
しかし、本当に課題は「人が足りないこと」だけなのでしょうか。
もちろん、人材確保は重要です。ただし、人員不足は現場で起きている結果の一つであり、その背景には、業務の進め方や役割分担、勤務体制など、職場の仕組みに課題があるケースも少なくありません。
採用だけで課題を解決しようとしても、働く環境が変わらなければ、同じ問題が繰り返される可能性があります。
そのため、まずは「今いるスタッフが働きやすい職場になっているか」という視点で、職場全体を見直すことが重要です。
人手不足を招く「働き方の前提」を見直す
クリニックでは、長年の慣習や経験によって業務が成り立っていることが少なくありません。
例えば、
- 特定の職員しか対応できない業務がある
- 業務分担が曖昧で、その場の状況に応じて対応している
- 忙しい時間帯に仕事が集中し、残業が常態化している
- ベテラン職員への依存が大きく、属人化している
こうした状態は日常業務として定着しやすいため、問題として認識されにくい傾向があります。
しかし実際には、一部の職員へ負担が集中しやすくなり、休暇取得や育成が進まない原因となることもあります。
「昔からこのやり方だから」という前提ではなく、現在の働き方が職員に過度な負担をかけていないかを客観的に確認することが、職場改善の第一歩です。
離職の原因は「忙しさ」だけではない
退職理由として「忙しかったから」と語られることがあります。
しかし、その背景を確認すると、
- 業務量に偏りがあった
- 誰に相談すればよいか分からなかった
- 役割が曖昧で負担感が大きかった
- 特定の職員だけが残業していた
など、「忙しさ」そのものではなく、働き方の不公平感や将来への不安が離職につながっているケースも少なくありません。
職場環境の改善は、単に業務を減らすことではなく、「負担を適切に分担できる仕組み」を整えることでもあります。
業務の見える化が、働きやすい職場づくりにつながる
労務管理の視点では、「誰が」「どの業務を」「どのくらい担当しているのか」を把握することが重要です。
例えば、
- 特定の職員だけが時間外労働をしている
- 同じ業務を複数人が重複して行っている
- 引き継ぎが難しく、休暇取得しにくい
- 業務内容と勤務時間が合っていない
このような状況を把握せずに人員を増やしても、負担の偏りが改善されるとは限りません。
まずは業務を整理し、役割分担を見直すことで、既存スタッフの働きやすさを高められる場合があります。
人数を考える前に取り組みたい改善のステップ
職場改善を進める際は、次のような順序で進めることが効果的です。
① 現状を把握する
勤務時間や時間外労働、業務内容などを整理し、職場全体の実態を確認します。
② 業務負担の偏りを確認する
特定の職員へ業務が集中していないか、役割分担に偏りがないかを把握します。
③ 業務分担を見直す
属人化している業務や重複している作業を整理し、複数人で対応できる体制づくりを検討します。
④ 勤務体制やシフトを見直す
業務量に応じた勤務時間や配置を検討し、無理のない働き方を目指します。
⑤ 必要な採用人数を検討する
職場環境を見直したうえで、本当に必要な人員数や採用計画を検討します。
採用はゴールではなく、より良い職場づくりの一つの手段と考えることが大切です。
労務管理の改善は定着率向上にもつながる
働きやすい職場づくりは、時間外労働の削減だけでなく、人材の定着にも大きく関わります。
例えば、
- 残業時間の偏りが改善される
- 有給休暇を取得しやすくなる
- 業務を共有しやすくなる
- 新しく入職した職員も業務を覚えやすくなる
こうした環境づくりは、職員の安心感や働きやすさにつながり、結果として離職防止や採用力の向上にもつながります。
まとめ
クリニックの人員不足は、「人数が足りない」という問題だけではなく、業務分担や勤務体制、働き方の仕組みが影響している場合があります。
だからこそ、採用活動を強化するだけではなく、現在の働き方を見直し、負担の偏りや時間外労働の発生要因を把握することが重要です。
私たち社会保険労務士法人サムライズでは、就業規則や各種労務手続きの整備だけでなく、医療機関における労務管理の視点から、業務負担の分析や勤務体制の見直し、時間外労働の削減、職場環境の改善などを支援しています。
「採用しても定着しない」「残業がなかなか減らない」「職員が安心して働ける職場をつくりたい」とお考えの際は、人員数だけでなく、働き方の仕組みそのものを見直すことが、持続可能な職場づくりへの第一歩となるでしょう。
